2012年11月12日月曜日

生薬の組み合わせによる効果と意義


漢方薬は複数の生薬(あるいは単一)の組み合わせにより構成される。
それは単なる生薬の総和と言うことではなく、組み合わせることにより、より強い効果、あるいは全く別の効果、または毒性の減弱など様々な変化を生み出す。
生薬の組み合わせによる特徴を知ることは、方剤の意味、効果を、言い換えれば証を知ることであり、新たな方剤を組む上での必須の知識となる。

組み合わせの例
甘草+石膏 表熱証
甘草+桂枝 表寒証
麻黄+杏仁 表実証 鎮咳平喘
麻黄+桂枝 表実証 発汗

ここで更に組み合わせてみると、
(甘草+石膏)+(麻黄+杏仁)=表熱実証の咳:麻杏甘石湯
(甘草+桂枝)+(麻黄+杏仁)=表寒実証の咳:麻黄湯

生姜+大棗 陰陽の調和

半夏+生姜 半夏の毒性減弱

黄芩+柴胡 胸脇苦満
黄芩+黄連 心下痞硬

竜骨+牡蛎 鎮静、収

芍薬+甘草 鎮痙

沢潟+茯苓、茯苓+猪苓 裏熱虚証の利湿
白朮+茯苓 裏虚証の利湿
白朮+蒼朮 温利湿、祛風
附子+白朮、附子+乾姜、附子+生姜 裏寒虚証の温利湿
甘草+乾姜 裏寒証、温肢冷
乾姜+人参 裏寒虚証、温補
半夏+人参、甘草+人参 裏虚証、補気

山薬+山茱萸 裏虚証、補気強壮

地黄+丹皮 裏虚証、理血

構成生薬が8種類程度の古方方剤であれば、それぞれの生薬の役割も理解しやすいが、構成生薬の多い大きな方剤となると分かりづらくなってくる。
よく使われる生薬の組み合わせを知っていれば、意外と簡単に整理でき理解しやすいか思う。
新たに方剤を組む際の方法は二通りある。一つは全くの更地に一つずつの生薬、あるいは生薬の組み合わせを積み上げていく方法。全く治療経験のない未知の症例にはこうするしかないだろう。
もうひとつは基本的な方剤、骨格となる方剤に加減を重ねていく方法である。
よく使われる生薬の組み合わせとともに、基本方剤とも言える、様々な方剤の原点になる方剤を知っていると漢方治療は非常に楽なものとなる。

2012年11月6日火曜日

薬物配合法則 第2回

相互作用の種類:七情

漢方方剤の配合法則は7種類に分類され七情と呼ばれている。
前述の相須、相使、相畏、相悪、相殺、相反に単一薬味の方剤(甘草湯、独参湯など)として用いる単行の7つである。
精神的ストレスをあらわす内傷七情と関連はない。

相須
 麻黄+杏仁、知母+石膏、知母+黄柏、陳皮+紫蘇、麦冬+天冬、黄芩+黄連、
 竜骨+牡蛎、肉桂+人参、炙草+人参、茯苓+白朮、山薬+白朮、地黄+丹皮

相使
 厚朴は麻黄、貝母の作用を強める
 川芎は辛夷、当帰の作用を強める
 黄芩は柴胡、大黄の作用を強める
 竜骨は黄芩、黄連の作用を強める
 防風は白朮、蒼朮の作用を強める
 茯苓は黄耆、人参の作用を強める
 地黄は麦冬、天冬の作用を強める
 枸杞は菊花、花粉の作用を強める

相殺

相畏
 半夏は生姜を畏れる
 当帰は生姜を畏れる
 竜骨は石膏を畏れる
 防風は乾姜を畏れる
 細辛は滑石を畏れる
 黄耆は防風を畏れる
 黄芩は丹皮を畏れる
 阿膠は大黄を畏れる
 貝母は秦艽を畏れる
 茯苓は秦艽を畏れる
 桔梗は竜胆を畏れる
 黄連は牛膝を畏れる
 沙参は防已を畏れる
 花粉は牛膝を畏れる
 辛夷は石膏、黄耆を畏れる
 川芎は滑石、黄連を畏れる
 麻仁は茯苓、牡蛎を畏れる
 巴豆は大黄、黄連を畏れる
 丹皮は貝母、菟絲、大黄を畏れる
 附子は防風、緑豆、黄耆、人参、犀角、甘草を畏れる

相悪
 黄芩と生姜、黄芩と杏仁
 黄連と生姜、黄連と菊花
 黄耆と細辛、黄耆と川芎、黄耆と杏仁、杏仁と葛根
 山萸と細辛、山萸と川芎、山萸と桔梗、山萸と防已
 牡蛎と麻黄、牡蛎と辛夷、牡蛎と呉萸
 貝母と地黄
 細辛と防已
 厚朴と沢潟

相反
 甘草は大戟、芫花、甘遂、海藻にそむき、
 烏頭は貝母、瓜蔞、半夏、白斂、白芨にそむき、
 藜藪は人参、丹参、沙参、苦参、玄参、巴参、党参、細辛、芍薬にそむく

  *引用:証と方剤学体系 玉城博任著