2013年2月4日月曜日

温中散寒剤と便通

日本における漢方薬の使われ方に時としてユニークを通り過ぎ驚かされることがある。
主にエキス剤が用いられているので大きな事にならずにすんでいるのだろう。
そんな例の一つとして、
慢性便秘に大建中湯が用いられていることがある。

ツムラの添付文書の効能には“腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの”
と書かれている。これは間違っていない。

大建中湯の構成生薬は蜀椒、乾姜、人参、膠飴
 蜀椒:熱        補       燥        升        散
 乾姜:温        補       燥        升        散
 人参:温        補       潤        升        収
 膠飴:温        補       潤        升        収
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大建中湯 温 補  升

腹が冷えれば下痢をする。
これが人間に普通に起こることである。

慢性的な便秘にある体質は、
熱、実、燥、升、収のいずれかが含まれる。

大建中湯が慢性便秘を治せる可能性は、
その潤性だけに負わされる。
他はより便秘にさせるか影響しない性質である。
大建中湯の潤性は膠飴に由来する。

ここで大建中湯の本来の効能を見てみると

温中散寒、解痙止痛、補気健脾
あるいは温中補虚・降逆止痛

蜀椒を用いるほどであるのだから、何らかの理由で急激に強烈な腹部の冷えが起き、
腸管が激しく痙攣する状態、
つまりイレウスであり、日常的な病態ではない。

慢性便秘などの日常的な症状に使う薬ではない。

潤性だけをあてにしているのであれば、小建中湯を用いた方が効果的である。
また傷陰のリスクも減るだろう。

ついでに書くと、
 小建中湯:便秘
 桂枝加芍薬湯:下痢
この使い分けさえ理解出来ずにいる専門家もいるらしい。