2013年8月25日日曜日

肝血虚

肝血虚とは、そのまま肝血の不足のことをである。
肝血は血の中でも滋養・栄養効果という面で捉える場合を指す。
肝血の不足は栄養障害、特に視覚の異常・筋肉の異常・皮膚の異常、そして月経・妊娠の異常に関わってくる。
    肝の生理


主な症状
 顔色や皮膚の色が悪く艶がない・爪がもろい・毛髪に艶がない・毛髪が抜ける・目の疲れ・目の乾燥・眩しい・眠りが浅く夢が多い・手足のしびれ・筋肉のひきつりなど、
月経では経血量が減少し、これは子宮内膜を正常に保てないことを意味します。

治法
 滋補肝血
当帰・芍薬・熟地黄・阿膠・何首烏・早蓮草・桑椹などの補血薬に川芎・鶏血藤・赤芍などの活血薬を加える。

2013年8月6日火曜日

心火・心火旺

一言で言えば心の働きが過剰になっている状態である。
過亢進であるから熱証であり、実証が大半である。
過度の精神ストレス、刺激物の過量摂取などが原因である。
主な症状
寝付けない・夢が多い・顔面紅潮・焦燥・じっとしていられない・動悸・胸が熱苦しい・口渇・口内炎・舌炎・甚だしい場合は狂躁状態や精神異常を呈する。
現代的な病名で言えば自律神経失調症・不眠症・統合失調症・神経症など


治法
清心瀉火
実熱であるので、とにかく冷やして除くだけである。
代表方剤
三黄瀉心湯・黄連解毒湯

2013年7月29日月曜日

心血虚と心陰虚

心血虚の症状
 寝付きが悪い・よく目が覚める・夢をよく見る・朝早く目が覚める・驚きやすい・不安感・悲しい・健忘・めまい・頭がふらつくなどの精神神経症状が主で、動悸を伴うことが多く顔色がさえない・舌質は淡白・脈は細。
心陰虚の症状
 のぼせ・焦燥・手のひらや足のほてり・口や喉の渇き・めあせ・舌質は紅絳で乾燥・脈は細あるいは浮数で無力。

治法
心血虚:補血安神
心陰虚:滋陰安神

代表方剤
 心血虚:帰脾湯・甘麦大棗湯・酸棗仁湯
 心陰虚:天王補心丹・朱砂安神丸

心血虚・心陰虚では精神症状が主になる。
安神薬の用い方がポイントになるのかと思われる。

2013年7月23日火曜日

心気虚と心陽虚

心は血脈を主り、神を主る。
心に病があると血脈運行の障害や意識・精神の異常が起きる。

心気虚の主症状:動悸・息切れ・胸苦しい・倦怠無力感があり動くと増強する。
顔色は淡あるいは蒼白・不安感・めまい感・冷や汗・舌質は淡白・脈は沈で細弱あるいは結代あるいは数、甚だしい場合は胸内苦悶・狭心痛が生じる。
心陽虚の主症状:四肢の冷え・寒け・顔面蒼白・口唇や爪のチアノーゼ・舌質は胖大あるいは青紫・脈は沈遅で細弱あるいは結代。多くの場合、同時に胸内苦悶・狭心痛が発生する。(中医学入門:神戸中医学研究会編)

気虚、陽虚であるので寒証を示し、陽虚ではそれが顕著である。
心での気虚は、そのまま心臓の機能失調、循環機能障害と考えて良さそうである。
現代的病名で言えば、不整脈・心房細動・狭心症・心筋梗塞があてはまる。

虚血性心疾患は血瘀を主因として捉えたいところだが、心気虚から始まると考えるべきである。精神的な負荷や慢性疾患による衰弱などが重なる心の機能失調を起こすのかと思われる。

治法:補益心気、温通心陽
 補気薬:炙甘草・人参・党参・黄耆
 温通薬:桂枝・附子・肉桂・益知仁

代表方剤
 心気虚:四君子湯・炙甘草湯
 心陽虚:桂枝人参湯

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2013年7月9日火曜日

不眠の漢方的考察

睡眠は太陽が地平線に沈むように、陽気が陰に入ることである。
眠れないということは、陽気が何かに妨げられ陰に入れない、
あるいは陰血が不足しているために陽気を受け入れることができないためである。

不眠の原因を具体的に分けると
1,心血虚・心陰虚
   寝付きが悪い・よく目が覚める・夢をよく見る・朝早く目が覚める・驚きやすい
   心陰虚はほてり、のぼせなど虚熱症状が加わる。

2,心火(心火旺)
   実熱である。
   寝つけない・夢が多い・顔面紅潮・焦燥・じっとしていられない・動悸・口渇など

3,心腎不交
   心火旺と腎陰虚の症候が同時に見られる
   心火の症状に、ふらつき・耳鳴り・手足のほてり・のぼせなどの腎陰虚症状が加わる

4,痰火擾心
  肝鬱化火の結果生じた熱痰が心竅(脳の機)を閉塞するか、熱邪の侵襲によって津液が濃縮されて生じた熱痰が心竅を閉塞して生じる。
  統合失調症、脳梗塞などによる脳血管障害、発熱性疾患による脳症、てんかんなどの場合にみられる

5,肝陰虚
  肝陰不足のため肝陽上亢となる。熱虚証であり虚熱である。
  高血圧症・脳動脈硬化症・自律神経失調症・更年期障害・慢性肝炎・慢性腎炎・甲状腺機能亢進症など
  口や喉の渇き・体の熱寒・ほてり・のぼせ・ねあせなどがある。
  肝陽上亢が明らかな場合は、イライラや怒りっぽい、顔面紅潮やめまい感などが出る。 

6,肝火
  肝の陽気の過亢進によるもので、実熱である。
  自律神経失調症・高血圧症・神経症・胆嚢炎・肝炎などでみられる。
  いらいらが強く怒りっぽい・入眠困難、悪夢をよく見る・頭痛・めまい・顔面紅潮・便秘

7,心肝火旺
  肝火の症候とともに強い不眠・躁・動悸・不安など心火の症候がみられる。

8,腎陰虚
  慢性疾患や性生活の不節制・発汗や出血、下痢・ストレスなどにより陰液の消耗によって生じ る。

9,風痰上擾
  
・不眠症に効果があると考えられる方剤

柴胡加竜骨牡蛎湯 梔子豉湯  清営湯 黄連解毒湯  三黄瀉心湯 交泰丸
導赤散 清心蓮子飲 黄連阿膠湯 帰脾湯 人参養栄湯 二至丸 左帰飲 炙甘草湯
 二仙湯 磁朱丸 朱砂安神丸 珍珠母丸 天王補心丹 柏子養心丸 酸棗仁湯 
甘麦大棗湯 血府逐瘀湯 建れい湯 天麻鈎藤飲 抑肝散 猪苓湯 温胆湯
十味温胆湯  清気化痰丸 滾痰丸

2013年6月4日火曜日

精と陰陽

人体を構成する最小単位は精、陰・陽、気、血、津液であり、
今回は精と陰陽の関係についてです。
この場合の陰陽は生態の構成単位、基礎物質としての陰陽であり、病や体質、環境などの偏向ではない。むろん結果としては同じ現象を表すことになるのかとは思う。
「陰」「陽」は精を元に作られる。
精にはご承知の通り、父母から受け継いだ先天の精と飲食物、水穀の精微から滋養される後天の精とがある。

・先天の精  先天的に備わった精 元精
・後天の精  飲食物より五臓で産生された精

 五臓で生成された後天の精は各臓の働きを維持し、その余剰は腎精として腎に蓄えられる。命門へ送られ「先天の精」の働きで全身の陰陽を生成する。
そして、命門で生成された陰陽は三焦を介して全身の五臓六腑に運ばれて各臓腑の陰陽になる。

陰陽の作用は、すべての生理機能が必要とする整理環境を産出し維持することである。そのために陰陽の協調平衡が必要。
「陽は温煦を主り、陰は涼潤を主る。」
代表的な陰陽の役割である。
結論としては人体、生命の根源は精であると言うことかと思う。

2013年3月19日火曜日

生薬の修治3 熟地黄について

以前に生薬の修治に関して投稿した際に地黄については記述していなかったかと思う。
地黄については自身の経験から感じ取れたところが大いにあったからである。
地黄の用い方には、

・生地黄:採取した地黄そのままである。熱証の皮膚疾患などに使われる。

・乾地黄:普通に地黄と呼ばれるものである。地黄を乾燥させ、自然に空気の酸化を受け黒くなったものである。ちなみに酸化を受けていない地黄は薄い褐色である。

・熟地黄:縮砂酒をまぶし長時間蒸した後に天日干しをする作業を繰り返したものである。地黄本来の寒性は完全に消え、補腎作用が増強され、腎陽虚に用いられる。

特に述べたいのは、熟地黄に関してである。
現在、漢方薬原料、調剤用生薬として流通している地黄は、乾地黄と熟地黄である。
乾地黄は問題ないとして、
熟地黄に関しては、大変手間のかかる修治方であり、完全な修治がなされてから流通しているとは考えいにくい。事実、再度修治しなおすと明らかに効果に違いが実感できた。
特に確実な補腎効果を求めたい場合は、ぜひ仕入れた熟地黄を、もう1,2度修治しなおして欲しい。効果の違いが感じられるはずだ。
通常、熟地黄の修治は、地黄500gに縮砂酒200mlを霧吹きで噴霧し6時間ほど蒸し器で蒸し、その後、天日で十分に乾かす。この作業を数回繰り返す。
生地黄から修治を繰り返した経験からすると、最低限4,5回繰り返す必要が感じられた。
熟地黄として仕入れたものは、もう一度繰り返すだけで十分違いは感じられる。
いずれにしても重要なのは天日干しである。
日光に当てることにより甘みが増してくる。

※縮砂酒について、
 縮砂50gを紹興酒500mlに半年以上つけ込んだものが縮砂酒である。
 ただし、紹興酒200mlに縮砂の煎じ液(20gを100mlから50mlに)を 加えたもので代用できるし、この方が管理が楽だし、実際の出来も悪くない。

熟地黄が鍵を握る場面は実際の治療では少なくないと思う。
ぜひ手間を惜しまず、修治し直して欲しい。
必ず違いが実感できるはずだ。