2013年3月19日火曜日

生薬の修治3 熟地黄について

以前に生薬の修治に関して投稿した際に地黄については記述していなかったかと思う。
地黄については自身の経験から感じ取れたところが大いにあったからである。
地黄の用い方には、

・生地黄:採取した地黄そのままである。熱証の皮膚疾患などに使われる。

・乾地黄:普通に地黄と呼ばれるものである。地黄を乾燥させ、自然に空気の酸化を受け黒くなったものである。ちなみに酸化を受けていない地黄は薄い褐色である。

・熟地黄:縮砂酒をまぶし長時間蒸した後に天日干しをする作業を繰り返したものである。地黄本来の寒性は完全に消え、補腎作用が増強され、腎陽虚に用いられる。

特に述べたいのは、熟地黄に関してである。
現在、漢方薬原料、調剤用生薬として流通している地黄は、乾地黄と熟地黄である。
乾地黄は問題ないとして、
熟地黄に関しては、大変手間のかかる修治方であり、完全な修治がなされてから流通しているとは考えいにくい。事実、再度修治しなおすと明らかに効果に違いが実感できた。
特に確実な補腎効果を求めたい場合は、ぜひ仕入れた熟地黄を、もう1,2度修治しなおして欲しい。効果の違いが感じられるはずだ。
通常、熟地黄の修治は、地黄500gに縮砂酒200mlを霧吹きで噴霧し6時間ほど蒸し器で蒸し、その後、天日で十分に乾かす。この作業を数回繰り返す。
生地黄から修治を繰り返した経験からすると、最低限4,5回繰り返す必要が感じられた。
熟地黄として仕入れたものは、もう一度繰り返すだけで十分違いは感じられる。
いずれにしても重要なのは天日干しである。
日光に当てることにより甘みが増してくる。

※縮砂酒について、
 縮砂50gを紹興酒500mlに半年以上つけ込んだものが縮砂酒である。
 ただし、紹興酒200mlに縮砂の煎じ液(20gを100mlから50mlに)を 加えたもので代用できるし、この方が管理が楽だし、実際の出来も悪くない。

熟地黄が鍵を握る場面は実際の治療では少なくないと思う。
ぜひ手間を惜しまず、修治し直して欲しい。
必ず違いが実感できるはずだ。