2012年6月17日日曜日

ぜんそくの漢方薬(その3)

エキス剤による喘息治療

喘息が発症は主に腎に起因する。
腎陰虚のために小児期から喘息を発症することが多い。

六味丸半夏厚朴湯 


エキス剤での対応の基本となる。
この場合いうまでもなく熱虚証を示している。

脾虚を伴ってくる状態になると、陽気不足から寒証をしめし、食欲不振や軟便傾向、薄い痰などの特徴が見られる。

六君子湯半夏厚朴湯


※小柴胡湯からの派生方剤を安易に用いるべきではない。
婦女子の多くは肝熱があり清熱剤に反応しやすい。それも虚熱がほとんどであるので、
実熱を冷ます黄芩、柴胡は不適である。

発作時や症状軽減に用いる処方。




桂枝厚朴杏仁湯


その他の喘息に用いられる方剤

冷哮丸(れいこうがん)
麻黄・川烏頭・細辛・蜀椒・明礬・皂角・半夏麴・胆南星・杏仁・生甘草・紫菀・款冬花

三子養親湯(さんしようしんとう)
紫蘇子・白芥子・蘿蔔子

麦味地黄丸(ばくみじおうがん)
麦門冬・牡丹皮・茯苓・沢瀉・五味子・熟地黄・山茱萸・山薬
     =八仙長寿丸

射干麻黄湯(やかんまおうとう)
麻黄・生姜・五味子・射干・細辛・紫苑・款冬花・大棗

定喘湯(ていぜんとう)
竹葉・甘草・石膏・粳米・麦門冬・半夏・人参・蘇子・桑白皮・地骨皮

蘇子降気湯(そしこうきとう)
半夏・蘇子・当帰・前胡・厚朴・桂枝・陳皮・乾生姜・大棗・甘草

至宝丹(しほうたん)
犀角・玳瑁・琥珀・朱砂・雄黄・竜脳・麝香・牛黄・安息香・金箔・銀箔

黒錫丹(こくしゃくたん)
黒錫・硫黄・沈香・木香・小茴香・陽起石・胡芦巴・補骨脂・肉豆蔲・川楝子・附子・肉桂

宣白承気湯(せんぱくじょうきとう)
石膏・大黄・杏仁・栝楼皮

三拗湯(さんようとう)
麻黄・杏仁・甘草・生姜

華蓋散(かがいさん)
茯苓・麻黄・杏仁・橘皮・桑白皮・生姜・甘草・蘇葉

瀉白散(しゃはくさん)
桑白皮・地骨皮・粳米・甘草・乾姜

2012年6月10日日曜日

ぜんそくの漢方薬その2

喘息の治療例

22才 男性 身長177cm 体重66kg
最近になって以前よりも喘息の発作(ヒューヒューといった音が出る)多分軽い発作が良く起きるようになって困る。特に朝が多いです。

1.大食できる
2.どちらかというと冷たい飲み物を好む
3.便はすっきり出る
4.尿量は普通
5.寝覚め良い
6.血圧普通
7.汗が多い

1,2より熱証と考えられる。
熱証で汗が多いのに便秘ではないため虚証と判断し、
熱虚証として治法を考える。

今回はネットからの相談である。
短い文面、情報から判断しなければならない。
22才で軽い発作と表現している。おそらく小児の頃から続いていた喘息がまた少し出ているのだろう。
身長体重からも健全に成長はしている。脾虚とみる要素はない。

喘息の本質である腎を強化しながら症状を和らげてあげれば快方へ向かうはずである。

処方
柴胡5半夏4厚朴3生姜2大棗4甘草2
人参3茯苓4蘇葉2山茱萸4熟地黄5
山薬6白朮4

補腎とともに三焦の気の流れを整えてあげれば良い。
2ヶ月ほどで改善。





2012年6月5日火曜日

ぜんそくの漢方薬(その1)

喘息に関する中医学的解説

ぜんそくのメカニズム

肺は気を主り、腎は気を納める
人間の呼吸は肺と腎の強調作用により成立しています。
特に腎の働きは重要です(腎主納気)。
呼吸により肺に入った空気を肺気と呼び、肺気は五臓六腑に清気を送りながら下降し腎に収納されます(肺の粛降作用)。
腎に納められた肺気は、先天の精・命門の火、すなわち生命のエネルギーの源となります。
肺気はもともと軽くふわふわしたものであり、
腎が虚すと、十分に納気出来なかった肺気が上昇してしまい、下降してきた肺気とぶつかり合い、気の乱れ、滞り、呼吸の障害が起こります。
これが喘息の発症メカニズムです。

また五行の関係より、土生金、すなわち肺の健全性を保つには脾が健全が前提となります。
喘息が慢性化して行くには脾の健康が関わってくるということです。脾は肺の親であり、親が弱っていれば子供も健康ではいられません。
そして脾は生痰の器であり脾虚は痰を生成し喘息を悪化させていきます。
胃腸虚弱者の喘息ほど治りにくくなります。
肺・脾・腎の関係が喘息の発症、そして治療の鍵となります。
喘息の治療は脾と腎の健全性をいかに保つか、それが本質になります。


小児喘息は腎陰虚。
小児期に完治せず成人型の喘息になった場合は脾虚を伴います。