2014年6月9日月曜日

湿熱について

湿熱とは

湿邪と熱邪が結合した病変
湿熱に陥るのは
・湿熱の邪を感受した場合
・湿邪が体内で化熱して湿熱になる
・内湿が化熱する場合

湿熱の種類
脾胃湿熱 肝胆湿熱 大腸湿熱 膀胱湿熱 
気分湿温

主症状
 持続性の発熱・食欲不振・悪心・嘔吐・腹部膨満感・口が粘る・口が苦い・口渇はあるが水分は欲  しない・便秘あるいは下痢・尿は濃く少ない・排尿障害・舌質は紅・舌苔は黄膩・脈は儒数あるいは滑数

論治
 清熱化湿

熱が湿より重い時は清熱、湿が熱より重い場合は化湿を主とする。
湿熱の治療において重要なのは湿が先か熱が先かということであり、
これを取り違えるの無駄に治癒を遅らせることになる。

湿が熱より重い

発熱は
比較的低い発熱で、持続性のことが多い。夜間に増嵩する傾向がある
胸腹
膨満感があって不快なことが多い
口渇
口渇がない、あるいは口渇があっても水分を欲しない
尿
尿量は少なくやや黄色
大便
下痢傾向
舌質は紅・舌苔は白膩あるいは微黄で厚膩
治法
化湿を主とし、清熱を補助的に用いる

熱が湿より重い場合

発熱
比較的高熱
胸腹
痛みが主で膨満感を伴う
口渇
口渇があるが少量しか飲まない、あるいは口渇があって飲みたがるが飲むと気分が悪い
尿
非常に濃い少量の尿
大便
便秘傾向
舌質は紅。舌苔は黄厚で膩、あるいは黄で類乾苔
治法
清熱を主とし、化湿を補助的に用いる

2013年12月10日火曜日

方剤の成り立ち〈基本方剤からの派生〉第3回


表証(膀胱経、肺経)の基本方剤につづき今回は裏証の基本方剤をまとめておきました。
各々の方剤の成り立ちについては追って詳説します。

            
        ┌─実── 大柴胡湯 ── 柴胡加竜骨牡蛎湯
        │
   ┌─ 熱──┤         ┌   柴胡加竜骨牡蛎湯
   │    └─虚 ── 小柴胡湯┤  
心  │                 ├  柴胡桂枝乾姜湯
心包─┤               │
胆  │                └ 柴胡桂枝湯
   │
   │               ┌ 苓桂朮甘湯
   │               │
   └  寒─── 虚 ── 桂半湯┼  香蘇散
                     │      ┌ 苓姜朮甘湯
                     └  小半夏湯┤  
                            └ 半夏厚朴湯
            
        ┌─実 ── 瀉心湯 ── 黄連解毒湯
        │
        │          ┌ 半夏瀉心湯 ─ 黄連湯
    ┌─熱─┤          │
    │   │          ├ 葛根黄連湯
胃   │   └─虚 ──補心湯─┤
小腸 ─┤              └ 黄連阿膠湯
三焦  │
大腸  │                     ┌ 桂枝加芍薬大黄湯  
    │
    │                     ├ 桂枝加竜骨牡蛎湯
    └─寒 ── 虚 ──桂枝加芍薬湯┤  
                          ├ 桂枝茯苓丸
                          │
                          ├ 安中散
                          │
                              ├ 平胃散
                         │     ┌ 黄耆建中湯
                         └ 小建中湯┤ 
                                 └ 当帰建中湯

                        ┌─┬ 麻子仁丸
               ┌燥─承気湯 ──┤ │
         ┌─実  ──┤        │ └ 大承気湯
         │     └湿─茵蔯蒿湯  │ ┌ 桃核承気湯
   ┌─ 熱──┤              └─┤
   │     │                └ 大黄牡丹皮湯
   │     │     ┌燥─白虎湯 ────  白虎加人参湯      
脾 ─┤     └─虚 ──┤        ┌── 猪苓湯    
   │           └湿─五苓散 ──┤     
   │                    └── 茵陳五苓散 
   │                 ┌───四君子湯──参苓白朮散
   │                 │
   └  寒─── 虚 ── 人参湯  │  
                     │   ┌ 大建中湯
                     └───┤  
                         └ 苓姜朮甘湯
              
                     ┌───  竹葉石膏湯   
              ┌燥─麦門冬湯┤   
    ┌─熱 ── 虚 ─┤      └──   清心蓮子飲        
    │         │
腎  ─┤         └湿─五苓散       
    │
                                                          ┌──   真武湯              └─寒 ── 虚 ──附子湯   ┤  
                     └──   八味丸
                           
                      ┌─   芎帰膠艾湯
                      │
           ┌─燥── 四物湯 ─┼─   十全大補湯
           │          │
肝 ── 寒──虚 ─┤          └─   人参養栄湯
           │
           │          ┌─   五積散
           │          │      
           └─湿── 当帰芍薬散┼─   逍遥散
                      │
                      └─   加味逍遥散

2013年10月6日日曜日

辛涼解表剤

辛涼解表剤
風熱の邪による表証の発熱・有汗・微悪風寒・頭痛・咽頭痛・咳および皮膚疾患に用いる。
辛・涼で発散に働く薄荷・牛蒡子・桑葉・菊花・葛根などを主体に、清熱解毒・透表の金銀花・連翹などを加えた方剤が基本となる。

主な辛涼解表剤
銀翹散

桑菊飲

麻杏甘石湯
 五虎湯

越婢湯
 越婢加朮湯

升麻葛根湯


扶正解表剤
虚証の外感表証に用いる

代表的な扶正解表剤
荊防敗毒散

十味敗毒湯

参蘇飲

麻黄附子細辛湯




2013年9月30日月曜日

辛温解表剤

解表剤とは発汗・解肌・透疹などの効能を持つ薬物を主体に作られた表証の治療を目的とした方剤である。
辛温解表剤・辛涼解表剤に分けられるが、別に虚弱者向けには扶正解表剤がある。

辛温解表剤
 風寒の邪によって引き起こされた表寒証の悪寒・発熱・頭痛・身体痛などを目標に用いる。
辛温解表薬:辛温解表剤は辛温解表の性質を持つ薬物を主体に作られる。
麻黄・桂枝・紫蘇葉・荊芥・羌活・防風・白芷・藁本・細辛・生姜・藿香・辛夷

主な辛温解表剤
・桂枝湯及び桂枝湯派生方剤
 桂枝加厚朴杏仁湯
 桂枝加葛根湯
 葛根湯
 葛根加半夏湯
 桂麻各半湯
 桂枝加黄耆湯
 桂枝加朮附湯
 
・麻黄湯及び麻黄湯派生方剤
 三拗湯
 華蓋散
 麻杏薏甘湯

・大青竜湯

・香蘇散

・小青竜湯
 

2013年9月25日水曜日

肝火上炎

肝火上炎(かんかじょうえん:肝火・肝火旺)
肝の陽気が過亢進した状態で、実証のみである。
肝気鬱結が助長して起きることが多いが、急激な情緒的興奮により生じることもある。
長引けば陰液を傷め肝陽上亢へ移行する。
神経症、高血圧、肝炎、胆嚢炎などの疾患に見られる。

主症状
いらいらが強く怒りっぽい・入眠困難、悪夢を見る、激しい頭痛、めまい、耳鳴り、突発性難聴、目の充血、口が苦い、呑酸、口渇、便秘など

治法
清肝瀉火
方剤
竜胆瀉肝湯、当帰竜薈丸

※心火旺の場合も不眠や興奮、いらだちが見られるが動悸を伴い、肝火上炎では眼の症状(充血など)、心火旺では舌に異常が見られる。


2013年9月16日月曜日

肝気鬱結

肝の病態の中でも肝気鬱結は最も多くみられるものの一つであろう。
肝気鬱結は肝の疏泄機能の失調であり、もともとは精神的な緊張・情緒の変動など、言い換えれば現代人のストレスに起因する病態であるので、多くの疾患を引き起こしている。
自律神経失調症・うつ病・神経症・消化性潰瘍・肝炎・胆嚢炎・子宮内膜症・子宮筋腫・甲状腺疾患等でみられる。

症状
憂鬱感・情緒不安定・ヒステリー・しゃべりたがらない・ため息が多い・胸脇部の張り痛み・胸苦しい・食欲不振・嘔気・便がすっきり出ない・便秘下痢を繰り返す・頻尿など

論治
疏肝理気・解鬱
柴胡・欝金・青皮・枳殻・枳実・川楝子(せんれんし)・香附子・厚朴・延胡索・烏薬などの疏肝解欝・理気の薬物を中心に用いる。
また肝気鬱結が続くと肝熱が生じ肝の陰血を消耗させるので、白芍・当帰・熟地黄・枸杞子などの補血薬を配合する。
また痰を伴うことで梅核気や甲状腺腫の原因となるので半夏・竹茹などの化痰薬を、血瘀と結びつくと子宮筋腫や子宮内膜症の原因となるため牛膝・桃仁・紅花等の活血化瘀薬をともに用いる。

四逆散・柴胡疎肝湯・逍遙散・大柴胡湯・柴胡桂枝湯

2013年9月8日日曜日

肝陰虚について

肝陰虚・肝陽上亢
肝陰の不足であるので相対的に肝陽上亢となる。
虚熱が大半であるので、肝火上炎のように積極的・一方的に冷やすわけにはいかないので注意が必要である。
肝陰の不足は腎陰不足と共に起きることが多く、
実際の病態としての肝陰虚は肝腎陰虚がほとんどとなる。

主な症状
口や喉の渇き・身体の熱寒・ほてり・のぼせ・ねあせなど、
肝腎陰虚では、これに腰や膝の無力感・手足のほてり・頭のふらつき・健忘・性機能異常などが見られる。
肝陽上亢が顕著だと目の充血やイライラ・怒りっぽい・のぼせ・めまい・耳鳴りなどが見られる。



治法
滋陰・平肝潜陽
滋陰薬:玄参・生地黄・天門冬・麦門冬・女貞子
滋陰潜陽薬:亀板・鼈甲・牡蛎・磁石
平肝潜陽薬:石決明・真珠・竜骨
清虚熱薬:牡丹皮・知母・白薇・銀柴胡・地骨皮