2013年7月29日月曜日

心血虚と心陰虚

心血虚の症状
 寝付きが悪い・よく目が覚める・夢をよく見る・朝早く目が覚める・驚きやすい・不安感・悲しい・健忘・めまい・頭がふらつくなどの精神神経症状が主で、動悸を伴うことが多く顔色がさえない・舌質は淡白・脈は細。
心陰虚の症状
 のぼせ・焦燥・手のひらや足のほてり・口や喉の渇き・めあせ・舌質は紅絳で乾燥・脈は細あるいは浮数で無力。

治法
心血虚:補血安神
心陰虚:滋陰安神

代表方剤
 心血虚:帰脾湯・甘麦大棗湯・酸棗仁湯
 心陰虚:天王補心丹・朱砂安神丸

心血虚・心陰虚では精神症状が主になる。
安神薬の用い方がポイントになるのかと思われる。

2013年7月23日火曜日

心気虚と心陽虚

心は血脈を主り、神を主る。
心に病があると血脈運行の障害や意識・精神の異常が起きる。

心気虚の主症状:動悸・息切れ・胸苦しい・倦怠無力感があり動くと増強する。
顔色は淡あるいは蒼白・不安感・めまい感・冷や汗・舌質は淡白・脈は沈で細弱あるいは結代あるいは数、甚だしい場合は胸内苦悶・狭心痛が生じる。
心陽虚の主症状:四肢の冷え・寒け・顔面蒼白・口唇や爪のチアノーゼ・舌質は胖大あるいは青紫・脈は沈遅で細弱あるいは結代。多くの場合、同時に胸内苦悶・狭心痛が発生する。(中医学入門:神戸中医学研究会編)

気虚、陽虚であるので寒証を示し、陽虚ではそれが顕著である。
心での気虚は、そのまま心臓の機能失調、循環機能障害と考えて良さそうである。
現代的病名で言えば、不整脈・心房細動・狭心症・心筋梗塞があてはまる。

虚血性心疾患は血瘀を主因として捉えたいところだが、心気虚から始まると考えるべきである。精神的な負荷や慢性疾患による衰弱などが重なる心の機能失調を起こすのかと思われる。

治法:補益心気、温通心陽
 補気薬:炙甘草・人参・党参・黄耆
 温通薬:桂枝・附子・肉桂・益知仁

代表方剤
 心気虚:四君子湯・炙甘草湯
 心陽虚:桂枝人参湯

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2013年7月9日火曜日

不眠の漢方的考察

睡眠は太陽が地平線に沈むように、陽気が陰に入ることである。
眠れないということは、陽気が何かに妨げられ陰に入れない、
あるいは陰血が不足しているために陽気を受け入れることができないためである。

不眠の原因を具体的に分けると
1,心血虚・心陰虚
   寝付きが悪い・よく目が覚める・夢をよく見る・朝早く目が覚める・驚きやすい
   心陰虚はほてり、のぼせなど虚熱症状が加わる。

2,心火(心火旺)
   実熱である。
   寝つけない・夢が多い・顔面紅潮・焦燥・じっとしていられない・動悸・口渇など

3,心腎不交
   心火旺と腎陰虚の症候が同時に見られる
   心火の症状に、ふらつき・耳鳴り・手足のほてり・のぼせなどの腎陰虚症状が加わる

4,痰火擾心
  肝鬱化火の結果生じた熱痰が心竅(脳の機)を閉塞するか、熱邪の侵襲によって津液が濃縮されて生じた熱痰が心竅を閉塞して生じる。
  統合失調症、脳梗塞などによる脳血管障害、発熱性疾患による脳症、てんかんなどの場合にみられる

5,肝陰虚
  肝陰不足のため肝陽上亢となる。熱虚証であり虚熱である。
  高血圧症・脳動脈硬化症・自律神経失調症・更年期障害・慢性肝炎・慢性腎炎・甲状腺機能亢進症など
  口や喉の渇き・体の熱寒・ほてり・のぼせ・ねあせなどがある。
  肝陽上亢が明らかな場合は、イライラや怒りっぽい、顔面紅潮やめまい感などが出る。 

6,肝火
  肝の陽気の過亢進によるもので、実熱である。
  自律神経失調症・高血圧症・神経症・胆嚢炎・肝炎などでみられる。
  いらいらが強く怒りっぽい・入眠困難、悪夢をよく見る・頭痛・めまい・顔面紅潮・便秘

7,心肝火旺
  肝火の症候とともに強い不眠・躁・動悸・不安など心火の症候がみられる。

8,腎陰虚
  慢性疾患や性生活の不節制・発汗や出血、下痢・ストレスなどにより陰液の消耗によって生じ る。

9,風痰上擾
  
・不眠症に効果があると考えられる方剤

柴胡加竜骨牡蛎湯 梔子豉湯  清営湯 黄連解毒湯  三黄瀉心湯 交泰丸
導赤散 清心蓮子飲 黄連阿膠湯 帰脾湯 人参養栄湯 二至丸 左帰飲 炙甘草湯
 二仙湯 磁朱丸 朱砂安神丸 珍珠母丸 天王補心丹 柏子養心丸 酸棗仁湯 
甘麦大棗湯 血府逐瘀湯 建れい湯 天麻鈎藤飲 抑肝散 猪苓湯 温胆湯
十味温胆湯  清気化痰丸 滾痰丸