2012年7月23日月曜日

蒼朮と白朮について

蒼朮と白朮の使い分けに関して

日本のエキス剤において、蒼朮と白朮の使われ方には常に疑問を感じていた。
もともと私自身の使い方は、表証や、より利湿を求める際には蒼朮、利水とともに補性
、健脾が必要な場合には白朮としている。五積散、桂枝加朮附湯、越婢加朮湯、薏苡仁湯など顕著な痛み症状が主目標である場合は蒼朮。六君子湯などの人参湯からの派生方剤、当帰芍薬散などは白朮である。
この蒼朮と白朮の使い分けについては、鹿児島の厚仁堂薬局 前村勉先生の著書「修治入門」に明解に記載されている。

運脾の蒼朮と健脾の白朮

その燥湿作用だけを取ってみると蒼朮の方が白朮に勝っているが脾胃への補性は蒼朮にはなく、一方の白朮はこれが優れている。
例えば食後すぐにもたれる、腹が張る、軟便をもよおすなどの症状(脾胃湿濁)がある場合で、お腹がすかずただ時間になったから食事をするタイプと、十分お腹がすいて食欲をもって食事をするタイプに分け、前者には白朮、後者には蒼朮を用いるようにしている。よって、補中益気湯、六君子湯、人参湯などは白朮、平胃散・茯苓飲は蒼朮と言うことになる。次に発汗(解表・通痺)と止汗。感冒や四肢の痛みに用いる場合、五積散・桂枝加朮附湯・疎経活血湯・越婢加朮湯・苓姜朮甘湯は蒼朮を、自汗が顕著で止汗目的で防已黄耆湯を用いる場合には白朮を用いるようにしている。そして更に特殊な例として、優れた白朮の安胎作用を考慮し当帰芍薬散は蒼朮ではなく白朮配合のものを用いている。
(「修治入門」前村勉著より)

誤った使われ方と正しい使い分け

処方によっては必ず白朮を、あるいは蒼朮を用いなければならない。そうしなければその処方自体の存在理由がなくなってしまう。補中益気湯や六君子湯は白朮でなければ処方自体の使用目的が不明瞭になってしまう。
五苓散や苓桂朮甘湯などはその時の目的によって白朮・蒼朮を使い分けるべきであろう。
いずれにしても、当然のことながら漢方薬を使いこなすには、例えそれがエキス剤だけだったとしても、正しい生薬の知識を持たなければ不可能なことだ。
一部のエキス剤で明らかに誤った生薬が使われている例はいくつもある。何故そんなことが起きたかはまた別の機会で述べたい。
ひとつ言えることは正しい漢方薬の使い方が周知されていけば、いずれ誤った使い方、誤った処方は淘汰されていくだろう。

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